歯の役割
歯周病や噛み合わせの影響はわかってきましたが、肝心の歯について「歯ってなんだろう」とあらためて思った読者も少なくないのではないでしょうか。
歯周病は、歯のもつ構造とたいへん深い関係にあります。
ここでは、歯の構造について話をしておきましょう。
歯は三層構造です。
歯の中心には「歯髄」と呼ばれる神経線経や血液などが入った細い管が入り込んでいます。
虫歯が進行すると強烈な痛みを生ずるのは、この歯髄が侵されたからです。
歯髄は、「象牙質」という、比較的やわらかい組織でおおわれています。
この象牙質はDentinと呼ばれ、歯科Dentalの語源になっているほど歯の本質的な部分です。
象牙質にも、象牙細管という管があって、その内部には細い神経線経が通っています。
だからこそ、虫歯やちょっとした刺激を敏感に察知することができるのです。
象牙質は歯髄から栄養をもらい、樹木のように育まれていますが、虫歯が進行して歯髄が侵されると、歯医者さんは歯髄をとって、そこに樹脂を詰めます。
歯髄から栄養が届かなくなった象牙質は、枯れ木のようにスカスカになってしまいます。このとき、問題となるのは、いちばん外側をおおう層です。
歯の表面は、外にさらされている部分は「エナメル質」、そして歯肉の中に埋まっている部分は「セメント質」といわれます。
歯冠部と歯根部とで呼び分けているのは、エナメル質とセメント質がまったく異なる組織だからです。
エナメル質は97%がハイドロキシアパタイトという無機質でできていて、人間のからだで表面に出ている組織としてはもっとも硬いものです。
セメント質は40〜50%が無機質で、有機質も多く、エナメル質と比べると、はるかにやわらかい組織です(ちなみに、象牙質は70%が無機質です)。
このセメント質が、私たちがおいしくものを食べること、あるいは噛む感触を楽しむ仕掛けをつくり出しています。
セメント質は、歯槽骨とじかに接しています。
歯冠寄りのセメント質には、歯根膜の一部であるシャーピー線経という堅固で太い線経がセメント質に入り込み、歯槽骨とセメント質をがっちりと連結しています。
歯根側にいくにしたがってシャーピー線経の数は少なくなっています。
なぜ、このような構造になっているのでしょう。
おそらく噛むことによるプレッシャーを入り口でしっかり押さえ、歯全体におよばないような仕掛けにしているからだと考えられます。
歯周病によって歯槽骨が吸収されはじめると、この堅固な仕掛けも破壊され、かつ歯を支える支点が下がるという二重のリスクを負うことになります。
また、歯周病で骨が吸収されると、歯肉が下がってきます。
つまり、やわらかいセメント質が外に露出してしまうので、この部分は歯磨きなどで磨り減りやすく、それによって知覚過敏を起こしやすくなるのです。
さて、もう一つ、歯の「歯根」についてもふれておきましょう。
歯根は、形や数が歯によって異なります。
歯は歯列といって連続して生え、その並んだ形はほぼ馬蹄形をしています。
前歯は、医学用語で 「門歯」というように、お口の入り口に見える歯です。
コマーシャルで謳われた「歯は命」というフレーズが指すのは
「白くてさわやかな美しい歯並び」のことで、この前歯にあたります。
そのはじにある、ひときわ大きくしっかりした歯が犬歯。
これは肉食獣の名残りです。
あごが小さいために飛び出てみえる犬歯は、日本では「八重歯」といわれ、愛橋の一つですが、欧米では文化のちがいからか、「ドラキュラの歯」とたいへん嫌われます。
犬歯は、肉などを噛み切るときにしっかり食い込んで離れないよう、歯根も長く丈夫です。
歯根は1本。切断がおもな目的ですから、おそらく1本の歯根で事足りたのでしょう。
奥歯では、前から数えて4本目と5本目の歯が小臼歯といわれ、小さく平べったい形をしています。
この歯は噛み切る目的と、臼のようにすったり砕いたりと多様な役割があります。
歯根は通常、下の歯で1本、上の歯で1本ないし2本で個人差があります。
ちょうど馬蹄形の曲がり口にあり、支えている骨が薄いため、歯周病になると噛み合わせで障害を受けやすいのが、この小臼歯です。
さらに奥にあるのは大臼歯。
噛み合わせにおいて大きな役割をもっています。
また、阻喩のかなめでもあり、大きな臼のように食べ物をすりあわせたり、砕いたりしています。
大臼歯は上下とも、しっかりとした頑丈な歯根が3本あるはずです。
「あるはず」と述べたのは、じつは現代人は、大白歯の歯根の数が少なくなる傾向にあるからです。
その傾向は第二大臼歯に顕著です。
1本しか歯根がない場合は、高い確率で咬合性外傷を起こしやすくなります。
いちばん奥の第三大臼歯は、いわゆる親知らずといわれる歯ですが、日本人の多くは、まともにまっすぐに生えてくることが少なくなりました。
たいていが横倒しで、智歯周囲炎というやっかいな病気になりやすく、場合によっては抜かざるをえないこともあります。
やはり、現代の日本人は食生活の影響であごが小さくなったからなのでしょう。
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