日本人は歯が弱い
現代の日本人は、ほかの国の方と比べて歯が弱いです。
硬い肉を咀嚼してきた欧米人や黒人の歯がしっかりしているのはある程度、想像がつくところですが、
同じ黄色人種である中国人と比較してみても、日本人よりよっぽどしっかりした歯をもっています。
現代の日本人の歯は全体的にこぢんまりしていて、あごも小さい傾向にあります。
エナメル質が薄く、歯肉も薄い……各国での診療活動をしている私の友人の歯科医は、そんな実感があるそうです。
江戸末期や明治初期の日本人の写真を見ると、あごが張ってしっかりした口元をしています。歯も現代人より、はるかに頑丈に見えます。
この百数十年で、なぜそんなに大きく変化したのでしょうか?
それは、やわらかい食べ物が多い食生活の影響がまず考えられます。
咀嚼回数の少なさは、あごの発達を遅らせ、歯の成長や噛み合わせにも影響をおよぼします。
また、咀嚼が少ないと唾液も十分に分泌されないため、歯に歯垢(プラーク)がつきやすくなります。
日本人の歯の脆弱さは、統計にもはっきりとあらわれています。
1994年の上海市の調査では、30代前半の虫歯経験歯数の平均はわずか2本以下。
一方、日本をみると、93年の大阪府の調査では、30代前半の虫歯経験歯数の平均が14本にもおよんでいます。
こうした統計は、歯科医院の数や歯科検診の有無、衛生観念、食生活などの要素が複雑にからんだうえでの結果ですが、その要因の一つに、日本人の歯の弱さ、虫歯へのなりやすさも含まれると思われます。
歯の質は、食生活の変化や公衆衛生などの社会的要素にも大きく左右されます。
かつての日本人の歯が今よりもっと丈夫だったのは、漬物や豆類、干物など硬いものを多く食べていたということ、甘いものがなかなか食べられなかったことなどの食環境とも深く関係しています。
もちろん、中国にしてもこの先、急速な近代化からくる食生活の変化、一人っ子政策からくる子どもの過保護などで歯質が変わっていく可能性はあります。
もっとも、日本人の虫歯は、歯磨き指導の徹底、意識の向上でかなり減少してきており、小中学生の虫歯数は大幅に低下しています。
対照的に際立ってきているのが、歯周病疾患の深刻さです。
ところが、全体の歯科の傾向としては、ホワイトニングや審美矯正といった外をつくろう方向ばかりに強い関心が集まり、
肝心の歯の健康、歯肉の健康が置き去られている傾向があるように思えます。
予防医学では、体質を知ることが病気やからだの不調を未然に防ぐ大きな手がかりとなります。
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